パパちゃんのはなし~選択・決断~

脳梗塞で寝たきりだが、奥様と娘様の愛情いっぱいの介護で過ごす方がいた。

 私たちが訪問すると「今日も変わりありません。パパちゃんのことよろしくね」と奥様は足早に台所に向かう。ベッド上で体を拭き、洗髪を始めると「気持ちいいわね。よかったわね」と奥様の可愛らしい声が響いてくる。奥様は台所でお肉とお野菜たっぷりのパパちゃん専用のパテの作業をしながら、パパちゃんを見守る。

 リビングのど真ん中に介護用のベッドを構え、娘さんも仕事から帰ると真っ先に「パパただいま」「くまさんみたい」とおなかを撫でられている。ご本には何も話せないけど、優しくて頼りになるお父さんの存在の大きさが、伝わる風景。お二人はずっとこのままのパパちゃんと一緒にいて最後まで自然な形を望んでいた。「胃ろうはしません。管をパパにつけたくない、かわいそう」。

 そんな中、肺炎での入院。数か月後、胃ろうをつけて退院された「あんなに話し合って、胃ろうはしないって決めていたでしょう。人って不思議ね、その時になってもう一つ深く考えたの。やっぱりこんな形でも帰ってきてほしかったの。本当に考えさせられたわ」奥様は相変わらずお肉や野菜のパテを今度は液体にして、愛おしそうに胃ろうに注入しながらはなしてくれた。

 最後の時はその2年後に訪れた。介護は大変だったが、それよりも自分たちで決断し愛情いっぱいに最後まで過ごせた時間がお二人にとって大切な思い出となっている。