Yukari

つい先日の看取りの話。

施設に駆けつけたご家族。

「私たちは、何をすればいいのでしょうか」

困惑した表情の息子さん。
寄り添うように立つ奥様とお孫さん。

お孫さんは今どきのファッションで、私の娘とよく似ている。
大きな目でじっとこちらを見つめていた。
緊張したお父さんの様子が不安なのだろう。
そう思うと、思わず微笑んでしまった。

「もう、充分なんですよ」
「この段階までくると、誰も何もせずとも苦しくはありません」
「お父様の力を信じて、ただ寄り添ってください」
「ここに来てくださったこと、それだけで充分なんです」

私は、亡くなる前の体の変化や現象を、できるだけ分かりやすく説明した。

すると、お孫さんはおじいちゃんのそばに腰を下ろし、髪にそっと触れた。
奥様はかけてあるバスタオルを整え始める。

「そうですか……苦しくないんですね」

息子さんは二人の様子をじっと見つめ、
ふと、ぽつりぽつりと話し始めた。

「この子はね、おじいちゃんの一番のお気に入りだったんです」
「女の子なのに、虫取りに連れて行ったり、あちこち連れまわして……」
「見せびらかしたかったんですよ、もう」

ようやく椅子に腰を下ろしながら、思い出話をする息子さん。
私は、おじいちゃんの顔色が少し戻ったような気がして、そっと声をかけた。

「なんか、言いたいようですよ」

その一言で、ご家族みんなが笑った。

***

「病・死・老」
私たち看護師が、日々向き合っている現実。

でも、もしかしたら――
私たちの経験が、そばにいる人を少しでも楽にできるのかもしれない。

幸せのきっかけは、そんな瞬間に生まれるのかもしれない。

そう思いながら、この仕事に携わり、27年が経ちました。